板の間にぺたりと座り夏深し   星川 水兎

板の間にぺたりと座り夏深し   星川 水兎

『季のことば』

 「夏深し」は夏もピークを迎えたという晩夏の季語。水牛歳時記を読むと、「春深し」や「秋深し」に比べ、やや中途半端な感じを抱かせ、「晩夏」や「秋近し」を詠んだ方が面白いと思う人が多いのか、歳時記によっては「晩夏」の傍題になっているのもある、という。確かに兼題に出され作句してみると、季感のキャラクターが掴み所なく、「秋深し」のようなイメージが湧きにくかった。投句作品も夏の盛りを過ぎた気分を上手く捉えた句は少ないように感じた。
 そんな中、掲句は実に上手く「夏深し」を表現していると思った。「板の間にぺたり」で、ひんやりとした板の間を素肌で感じている年配の女性が想像される。「アッパッパ(夏の季語)」のようなふんわりとした服を着て、横座り。うーむ、確かに「晩夏かな」や「秋近し」、「秋隣」どれも合わない。「夏深し」がぴったりだ。案の定、句会では人気を集め最高得点だった。
 作者はこれまでも「ひやひやと肌につけたる黒真珠」や「木の実ふむパチンと山の音がする」など、皮膚感覚の鋭い作品をよく詠んでいる。掲句もその系譜に連なる独特の表現で、読者の心をしっかり掴んだ。
(双 22.7.29.)

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