立冬のホットミルクに薄い膜   嵐田 双歩

立冬のホットミルクに薄い膜   嵐田 双歩

『季のことば』

 立冬は二十四節気のひとつで、新暦では今年は11月7日にあたる。暦の上ではこの日から冬に入る。まだ秋の気配が濃いものの、朝夕は冷え込みを覚え、木枯らしが吹き始めたり、時雨がぱらついたりする。「いよいよ冬だという緊張感が、立冬という言葉にはある」(水牛歳時記)。
 掲句はそんな立冬の朝の情景を語調よく詠んでいる。つい先日まで冷たいまま飲んでいた牛乳を、冷え込みを感じて温めて飲む。カップの表面に薄い膜が出来ているのを発見し、思わず句にした。見たままを素直に詠んだ写生句のように見えるが、意外に詠めそうで詠めない。言葉の選択や語順など工夫の凝らされた句と思う。
 上五に立冬というやや硬い響きの言葉を選んでいる。立冬の傍題には「冬来る」や「冬に入る」もあるが、硬質な立冬を使うことで柔らかいミルクとの対比が際立つ。さらにホットミルクの中七も効果的だ。冬を迎えた緊張感をホットミルクの温かい語感が和らげる。これが「熱いミルク」では語調も悪く、読み手の心が温まって来ない。
語順も上手い。立冬という抽象的な概念に対しホットミルクの実物を提示し、薄い膜のクローズアップで終わる。薄い膜はミルクが文字通り「ホット」であることを示しており、息を吹きかけ飲んでいる作者が浮かんでくる。
(迷 21.11.09.)

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