故郷は釣瓶落しの海の果て    中村 迷哲 

故郷は釣瓶落しの海の果て    中村 迷哲 

『この一句』

 この句を読んで九州の海辺の土地や島を連想する人が多かった。筆者もその一人で、この句を読んで檀一雄の「落日を拾ひに行かむ海の果」の句を思い出し、彼が晩年に住んだ博多湾の能古島(のこのしま)を連想したのである。ところが、これはまったくの思い込みで、調べてみると、檀一雄が詠んだのは、能古島より以前に住んだリスボン近郊のサンタ・クルスという漁村らしい。あらためて地図で見ると、能古島からは糸島半島が邪魔して「落日」は見えない。
 ところでこの句の作者である中村迷哲氏の故郷は佐賀県の鹿島市。島ではないが、有明海に面したまさに九州の海辺の町であり、大方の予想は外れなかったわけである。作者は番町喜楽会報第119号(2018年5月)に「ふるさとの海」と題する随想を寄せられ、天下に名高いムツゴロウをはじめ、アゲマキ、赤クラゲ、渡り蟹など、有明海の豊富な海産物とそれを育む風土の豊かさについて紹介されている。この随想を読んだ時、こんな自然豊かな故郷を持っておられるのは本当にうらやましいな、と思ったのを今も覚えている。
 コロナ禍により旅行も帰郷もなかなか叶わないこの時期、一句にこめられた望郷の念が読み手にいっそう強く伝わる。
(可 21.09.23.)

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