ざわざわと夜の向日葵動き出す  嵐田 双歩

ざわざわと夜の向日葵動き出す  嵐田 双歩

『この一句』

 向日葵を詠んだ句はほとんどが昼間の光景である。漢字で「日に向く葵」と書くのだから当然ではあるが、それにしても昼間の句ばかりである。以前、金子兜太の「きょお!と喚いてこの汽車はゆく新緑の夜中」の句について、一部から、新緑は昼間のものであって「新緑の夜中」はおかしいという異議申し立てがあったという話を聞いたことがある。向日葵にも同様に、昼間を詠まないといけないというしばりがあるのかどうか知らないが、いずれにせよ太陽が照りつける中で咲く向日葵が、もっとも向日葵らしいということはよくわかる。
 ところが、この日の句会には、この句と「向日葵の夜は時々後ろ向く」と、夜の向日葵を詠んだ句が二句も登場した。しかも、二句ともにとても斬新で秀逸な句である。
 掲句を読んで筆者が想像したのは、戦国時代の軍勢が夜間に行軍を始めるような光景である。あるいは、まだ実物を見たことがないが、兵馬俑の光景も浮かんできた。その背丈が高く、大輪の花が人間の頭や顔のように見える向日葵は人間の立姿のように見え、向日葵畑は人間の集団を想起させる。また、「ざわざわ」というオノマトペが、武将や兵士からなる甲冑姿の軍団とその行軍を想起させるのである。夜の軍隊はとても不穏で不気味であるが、いっぽう、なぜか、とても詩的なものを感じさせる。
(可 21.07.14.)

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