あかがねの月欠けて満つ露台かな  徳永木葉

あかがねの月欠けて満つ露台かな  徳永木葉

『この一句』

 日本で3年ぶりに観測された月食を風雅に詠んだ句である。今回の月食は地球の影が月をすっぽり覆う皆既月食で、月が最大に見えるスーパームーンと重なることから注目を集めた。
 当日は午後6時40分過ぎに月が欠け始め、8時10分頃から皆既食が10分ほど続き、10時前に満月に戻った。皆既食となっても真っ暗になるのではなく、太陽光のうち波長の長い赤色が地球の大気で屈折して届くので、月は赤黒く見える。この赤銅色の月が皆既食の象徴とされる。
 掲句は「あかがねの月」が欠けて満ちるという、和歌を思わせる雅な言葉で皆既月食を表現する。配する季語は「露台」である。露台とは建物の外に張り出した床縁で、バルコニーやテラス、ベランダを指す。暑い時季には涼む場所となるので夏の季語となる。
 この夜、関東地方は曇り空が多かったが、作者の住む千葉県は晴れ間が広がり、天体ショーを満喫できたようだ。ただ二階のベランダから月を眺めたと考えては情緒がない。露台には宮中の紫宸殿と仁寿殿との間にある渡り廊下の意味もある。平安貴族が露台に佇み「あかがねの月」に心を奪われている場面を想像した方が、句の趣に沿うのではなかろうか。
(迷 21.06.21.)

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