陽をはじく大地の鏡田水張る   徳永 木葉

陽をはじく大地の鏡田水張る   徳永 木葉

『この一句』

 作者のコメントによると、掲句は自宅から商業施設(スーパーマーケットか)に車で向かった時の体験を詠んだのだという。目的地への道路は、両側に水田の広がる農道のように思える。田に水を張ったばかり。時間は午前十時前か午後三時過ぎだろうか。陽光が田植え前の水田に斜めに当たって撥ね返り、車を運転する作者の顔へまともにギラリと襲ってきたのだ。
 普通の運転者なら「まぶしいなぁ」と顔をしかめるところだが、作者は「この状況を句にどう表すか」と考えたのだろう。そして家に帰ってからしばらく、例えば晩酌の際にでも「陽をはじく大地の鏡」という素晴らしい惹句に思い至ったのだ。私はこの句を見た途端、「凄いなぁ」と感嘆した。体験者でなければ絶対に思いつかないフレーズだと思った。
 田水を張ったばかりの田が車のすぐ真横にあるからこその「大地の鏡」との出会いであった。国道などから見下ろす田んぼではこうはいかない。この句の示す状況は、五七五を逆転させた方が分かり易いが、「田水張る」を敢えて最後に置き、中七と下五の間に「切れ」を作った。これによって田植えがすぐに始まり、一帯がたちまち青田に変わっていくことが示されている。
(恂 21.06.13.)

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