摘果終へ父と並んで冷し汁    中村 迷哲

摘果終へ父と並んで冷し汁    中村 迷哲

『この一句』

 「冷汁」という五月句会の兼題。九州に生まれ育った句友の作品が大好評を得た。幼少から馴染んできた郷土食であり、実景や実体験をほどよく織り込めるせいだろう。夏に冷やした汁で食事するのは、いまや全国で見られるのだが、やはり本場は大分、宮崎あたり。本場の冷汁は焼いた鯵をほぐし、麦味噌をといた汁に胡瓜、大葉や茗荷など薬味をくわえ、そのうえ氷でも浮かべれば一丁上がり。これを冷や飯にかけてかっ込む。余談ながら以前の筆者は居酒屋に行って冷や汁の昼めしをするのが好きだった。
 この句は作者の思い出の一場面であろう。佐賀出身の作者は父君、母君の思い出を詠んでよく高点をさらう。この句もそれにぴたりはまった作品だ。景は父子ふたりで庭のなにかの果樹か、あるいは畑の胡瓜や茄子の果菜の間引きを終え、やれやれと昼食に向かうところ。母君が用意の昼ご飯には冷やした汁がついている。「父と並んで」とあるから、向かい合わせのダイニングではなく縁側を想像する。作業着のまま隣り合わせに座っているが、父子の間にはあえて会話は必要としない。父親の疲れを気遣いながら、ぼそぼそ収穫時の相談でもしているのか。果樹だとしたらなんの樹だろうか。「摘果」の措辞が二人の手慣れた農作業を思わせ、雰囲気のある句となっている。
(葉 21.06.06.)

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