渾身の一日花やオクラ咲く    谷川 水馬

渾身の一日花やオクラ咲く    谷川 水馬

『季のことば』

 「オクラ」はアフリカ原産のアオイ科の一年草。筆者は最近、オクラの花を初めて知った。近所の散歩コースには様々な農作物が植えられていて、日々の成長ぶりを横目に歩いている。自分で育てた経験のある野菜もあり、ある程度は何が植わっているか判明がつくが、ある日、茎も葉も見た事のない植物を見つけた。何日か経つと、やがて淡い黄色の花を咲かせ、後日、下の方に何やら実のような物が認められた。そこで初めて「なんだ、オクラか」、とようやく正体が分かった。そんな矢先に出会ったのが掲句だ。オクラが一日花というのはこの句で知ったが、同じアオイ科の仲間に木槿や芙蓉もあり、どれも一日花。道理で花が似ている、と納得した。
 作者の住まいの近くには、谷戸と呼ばれる田畑に適した地が広がっている。掲句は愛犬と散歩中の一人(と一匹)吟行の詠だろう。ひょっとしたら作者も初めてオクラを知ったのかと思ったが、とんでもない。作者の郷里、鹿児島は全国一のオクラの産地。当地では、オクラが全国の食卓に上るずっと前から食していたという。だとしたら、花はもちろん調理法から何から熟知しているに違いない。そんな作者が散歩中に馴染み深いオクラの花を見て、懐かしくも愛しい気持ちになったのだろう。「渾身の」の形容にオクラへの愛情が感じられる。その感動は読者にも届き、採った人は口を揃えて「渾身」の措辞を褒め讃えた。
(双 20.11.04.)

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