百日紅路上に落ちて紅きまま   鈴木 雀九

百日紅路上に落ちて紅きまま   鈴木 雀九

『この一句』

 「暑い暑い」と喘ぎながらアスファルト道を辿っていたら、真紅の花びらがいっぱい散らばっている。見上げると百日紅が満開。我が家から最寄りの私鉄駅に至る狭い裏通りで夏の盛りによくぶつかる情景だ。木でも草花でも、花びらは散ると萎れるのが普通なのだが、百日紅はいつまでも形を保っている。それが暑苦しさを増すようでもある。この句はそうしたうんざりするような気分を如実に表している。
 しかし、百日紅という樹木のしたたかさには感心する。「散れば咲き散れば咲きして百日紅」と北陸金沢の加賀千代女(1703─1775)が詠んでいるように、7月から9月まで炎天下に咲き続ける。それほど強そうにも思えない木なのだが、つくづく眺めれば、やはりかなりの強かさだ。幹は大して太くならず、くねくねと何本かに分かれて主幹は最大で高さ五メートルほどになろうか。年取ると樹皮が剥がれてすべすべになる。「サルスベリ」と言われる所以である。
 そしてぎらぎら照りつける中で、怖めず臆せず咲き継いで行く。大言壮語しながら、何もかも中途半端のまま、体調不良を理由に重責を放り出したソーリは床の間にこの一枝を生けたらいかがか。
(水 20.08.30.)

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