涸れミミズ昨日と同じフェンス脇  斉藤早苗

涸れミミズ昨日と同じフェンス脇  斉藤早苗

『季のことば』

 蚯蚓(ミミズ)は夏場活動的になり、よく人目につくようになるので夏の季語になったようだ。大雨が降り続いた後、急な日照りに見舞われると、路上に沢山のミミズが干からびていることがある。時にはほんの十数メートルに百匹以上転がっていることもある。
 20年ほど前、朝夕の犬の散歩でこの「ミミズの集団自殺」によく出遭い、「干からびて蚯蚓疑問符描きをり」と詠んだことを思い出した。とにかく丸まったり長く伸びたり疑問符の形をしたりして干からびているのだ。
 普段は土中に棲み、土を呑み込んで中の栄養分を吸収して大きくなり、子孫を増やす暮らしをしているから、蚯蚓は元来は湿気を好む。しかし、肺も鰓も無い皮膚呼吸だから、長雨で水浸しになると窒息してしまう。苦しくなって地上に這い出す。少し乾いた土中に潜り込めればいいが、そこに行くまでに体力が尽き、お日様に当たり過ぎたヤツはあえなく干物になってしまう。というのが「涸れミミズ」出現の経緯だ。
 路上の涸れミミズは一顧だにされない。次の雨で流されるか、風化して粉になって飛散するまで、疑問符を描いて横たわっている。この句は「昨日と同じフェンス脇」と、無技巧の技巧と言おうか、見たままを詠んでとても面白い。
(水 20.07.28.)

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