海も山も駄目か今年の夏休み   井上庄一郎

海も山も駄目か今年の夏休み   井上庄一郎

『この一句』
 「今年の夏は、海も山も駄目か」と嘆いている作者は、卒寿を越えてますます元気に作句を続けている。大好きな山歩きは控えていると聞くが、矍鑠として句会にも出席し、「自分のことを言われたみたい」などと軽妙な句評を述べたりもしている。掲句はそんな作者がふっと口をついて出た呟きを、そのまま句にしたような作品だ。
 日常の呟きがそのまま俳句になったといえば、正岡子規の「毎年よ彼岸の入りに寒いのは」が有名だ。前書に「母上の詞自ら句になりて」とあり、子規の母、八重さんが「彼岸の入りに寒いのは毎年のことよ」とでも言ったのかもしれない。無技巧の技巧とでもいうのだろうか。ふと口から出た台詞がたまたま575に収まった句は、変にこねくり回さない分、読者に素直に届く。
 コロナ禍での本格的な夏を迎え、句会では掲句も含め「祭りなき夏の暦の白さかな(博明)」や「夏休み空白のまま近づきて(ゆり)」などの投句があった。初めて経験する異常事態に価値観や生活が一変する中で、令和2年の短い夏休みが始まる。
(双 20.07.21.)

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