晩節は妻の裏方毛虫焼く    玉田 春陽子

晩節は妻の裏方毛虫焼く    玉田 春陽子

『この一句』

 冒頭「晩節は」で始まるところがいかにも面白い。晩節にはいくつかの意味があるようだ。辞書には 1.人生の終わりの頃、晩年 2.晩年の節操 3.末の世、末年 とある。晩節というとすぐに「晩節を汚す」とか「晩節を全うする」という文句が思い浮かぶが、これは二番目の意味からきているのだろう。人生も終わりにさしかかると、なにやら不安定な状況になり、つまらぬことに手を染めたり、間違いを起こしたりすることが多いという戒めだろうか。
 掲句は、退職した高齢者が奥さんに言われて、毛虫の始末をしている光景だろうか。庭木の手入れなどは普段は奥さんまかせだが、毛虫だけは奥さんの手に負えず「あなたの出番よ」というところだろうか。会社に行かなくなって毎日家にいると、家庭の主導権を握るのは俄然奥さんの方。亭主は素直に従うのがよろしい。毛虫の始末であれなんであれ、頼まれるのは頼りにされている証拠である。
 筆者は一度も毛虫を焼いた経験がないが、この亭主は毛虫が焼けるのだから大したものである。いずれにせよ「妻の裏方」に徹しているかぎり、「晩節を汚す」恐れはない。毛虫にははなはだ迷惑だろうが、家庭的には微笑ましい一句である。
(可 20.06.29.)

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