ふるさとの月夜に浮かぶ青田かな  吉田正義

ふるさとの月夜に浮かぶ青田かな  吉田正義

『この一句』

 月夜の青田・・・。これを見るのは容易のようで、かなり難しいと思う。私(筆者)の場合、八十年余りの人生で何と、一度も見たことがないのだ。何年か前、句仲間とともに長野・姥捨の十五夜を見に有名な棚田に出かけたが、稲の収穫時期に近く、青田ではなかった。青田は魅力的だが、それだけを見に行くのは酔興に属するのかも知れない。
 句会でこの句を選んだ人は次のように述べていた。「私の故郷を思い出しました」(尚弘)、「青田を月が煌々と照らしている信州の田舎の様子が目に浮かびます」(敦子)。そして作者はこう語る。「初夏の澄んだ月と青田の風景です。詠んでみたら懐かしさがこみ上げてきました」。その通りなのだろうが、田舎のない私は、どこに行ったらいいのか。
 旅行はどうだろうか。団体のツアーに「夜の青田見物」はなさそうだ。適当な地方都市に出かけ、ホテルに泊まっても簡単ではない。温泉旅館に行くのも多分ダメ。昼間なら列車の窓からごく簡単に、存分に見ることが出来るのに・・・。運転免許を持たない今、さまざまな月夜の青田風景が、私の頭の中に広がるばかりである。
(恂 20.06.14.)

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