立秋の夜に密林を迷う夢     高橋 ヲブラダ

立秋の夜に密林を迷う夢     高橋 ヲブラダ

『おかめはちもく』

 この句はざっと読んだだけではすっと通り過ぎてしまう。しかし、じっくり読んでみると、寝苦しい立秋の夜の雰囲気が伝わってきて、そこからその世界に引きずり込まれてしまう。そんな妖しげな力のある句だ。
 しかし「に」と「を」という二つの格助詞があって、句を散文的にしている。どちらかを省いて歯切れを良くすると、この句の浪漫的な雰囲気が盛り上がる。どちらを取ろうか。おそらく「夜」を「よ」と読ませて5・7・5を整えるために、こうなってしまったのだろう。思い切って「に」を省いて「立秋の夜」としてしまえば、名詞止めの「切れ」が生じて、自然に「よる」と読んでもらえるようになる。7音10音の句またがりの二句一章。「立秋の夜」が独立し、しかも「密林を迷ふ夢」とそこはかとなく繋がりもついている。さらに、ここでちょっとした余韻が生じるから、句にふくらみが出る。
 「立秋の夜密林を迷ふ夢」──ルビなど振らずとも、密林を勝手に「ジャングル」と読んでくれる人もいて、一緒にさ迷ってくれるかも知れない。アンリ・ルソーかヲブラダか、の世界である。(水)

"立秋の夜に密林を迷う夢     高橋 ヲブラダ" へのコメントを書く

お名前:
メールアドレス:
ホームページアドレス:
コメント: