春光や天龍の鮎高く跳び     宇野木敦子

春光や天龍の鮎高く跳び     宇野木敦子

『季のことば』

 天竜川は長野県の真ん中にある諏訪湖から流れ出す。初めは「これが天龍か」と驚くほど川幅が狭く、冗談でなく本当に飛び越せるほどなのだ。ところが伊那谷を南へ下るうちに、中央アルプス、南アルプスから流れ出る水をどんどん取り入れ、たちまちのうちに急流の大河に化していく。
 作者は毎日、天竜川を見ながら少女期を過ごした。戦時中、東京から親族の住む喬木村に疎開し、中学生の時に東京へ戻ったが、今でも伊那へちょくちょく出かけて行くそうだ。この季節の天龍は、若鮎の遡る季節でもある。急流を跳ね飛ぶ鮎を、岸辺からも見ることが出来るのだろう。
 「春光」は句会の兼題であった。この季語によって、天龍川の鮎の姿が作者の脳裏に浮かんで来たのではないか。歳時記によっては春光の傍題として、春景色、春色、春容、春景などを掲げている。しかし何と言っても魅力的なのが「春光」だ。特に鮎に配した時、春光はさらに輝いてくる。(恂)

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