枯れ蓮の黒きはちすに種光る     澤井 二堂

枯れ蓮の黒きはちすに種光る     澤井 二堂

『おかめはちもく』

 大きな葉が黒褐色になって無惨に破れ朽ち、それを捧げていた茎も折れてしまった。真ん中からすっくと立ち上がった花茎の頂上に清純無垢、しかも華やかな極楽浄土の花を咲かせていた蓮だが、真冬ともなると、否応なしに「悽愴」とか「末期」といった言葉を思い出させる姿になる。
 その中にあって、唯一の救いが蓮の実である。秋も深まると、お椀形の花托の蜂の巣状の穴には種子が熟し、やがて転げ出し、飛び散る。しかしこの句の蓮の実は真冬になっても転げ出さない異端児のようだ。一度に飛び散ると何らかの天変地異に遭って全滅ということがある。それを避けるための種族保存の本能で散り残るのかも知れない。蓮はこうして何万年も生きてきたのだ。
 枯れ蓮をじっと見つめて句案している作者の姿が浮かび上がって来る。この律儀さには思わず「いいなあ」とつぶやく。しかし、「はちす」とは蓮の古名であり、「蓮」と書いて「はちす」と読ませる例も多い。作者は「蜂の巣」を言いたかったのだろうが、やはりこの重複感は避けた方が良さそうだ。
  (添削例)  枯蓮の黒き花托に黒き種子  (水)

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