ひとめぐりして気がつきし冬桜     星川 水兎

ひとめぐりして気がつきし冬桜     星川 水兎

『この一句』

 ひっそりと咲く冬桜の風情を真によく表している。11月末に行った本郷の吉祥寺には、山門を潜ってちょっと行った左側に冬桜があるのだが、本堂へ行く時には見過ごしてしまい、帰りに気が付いた。まさにこの句の通りであった。派手なソメイヨシノなどと違って、ほんのりと薄紅を差した白い小さな花を葉隠れに数輪ずつ咲かせているから、気づかずに通り過ぎてしまう人も多い。
 日本を象徴する花である桜にはヤマザクラ、エドヒガンなど基本となる10種の野生種があり、それらが自然交配して固定した変種がざっと100種類、さらにそれらを人工的に交配して生み出した園芸品種が600種類以上もある。「冬桜」は基本種のオオシマザクラとマメザクラが自然交配して生まれた品種で、4月に咲き、10月末から12月にかけてもう一度咲く。江戸時代から盛んに植えられるようになったが、成長力があまり旺盛でなく、大木にならない。花も一重の楚々としたもので、そこがまた愛され珍重される所以でもある。
 「ひとめぐりして気がつく」とは実に上手いなあと思う。花に限らず、しばらくしてからその人となりに気づく、そうした奥床しい人がごくまれにいる。そんなことも考えさせられて面白い。(水)

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