夏めく日遂に二人か我がすみか      石丸 雅博

夏めく日遂に二人か我がすみか      石丸 雅博

『季のことば』

 句を選んだ人が言った。「娘がお嫁に行っちゃって、ふと気づくと奥さんと二人になっていた。それが夏めいた日だったのですね」。作者は答えた。「大体そういうことです」。簡単に作ったね、と思った。私なら「春めく」「秋めく」など上五を変えてみて「季が動くかな」などと考えるだろう。
 兼題「夏めく(夏兆す)」には、いかにも夏らしくなってきた、という句が多く詠まれた。「雲の色」「ワイシャツの袖」「木陰の風」・・・。逆に夏らしさとは無関係と見えて、じっくり鑑賞すると「なるほど」と感嘆するような句もあって、高点を獲得。俳句の本質ここにあり、という評も生まれてくる。
 掲句はそのどちらでもない。我が家に自分と奥さんの二人だけ、と気付いたのが夏めいた日だったのだ。ところが句を見つめていると、作り物ではない現実感がじわじわと浮かんでくる。作者にとって「夏めく」は動かし難く、それだからこその季節感も生まれる。俳句とは不思議なものなのだ。(恂)

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