しとど打つ加賀の甍や冬の雨     廣田 可升

しとど打つ加賀の甍や冬の雨     廣田 可升

『おかめはちもく』

 金沢の寺や古い民家の屋根瓦は黒くてつやつや光っている。これは「能登瓦」という、黒い釉薬が掛けてある石川県の特産品である。釉薬によって表面がすべすべして艶がある。耐寒性があり、雪に強い特性を備えているので、能登地方だけでなく、隣の金沢をはじめ越中、越後でも盛んに用いられている。これが加賀や能登の景観を際立たせる一つにもなっている。
 「弁当忘れても傘忘れるな」と言われるほど冬の金沢辺は雨が多い。時には雨がみぞれになり、雪になり、吹雪にもなる。我々が金沢の寺町を廻った時にも強い雨に遭った。この句はそんな金沢の冬の様子をよく表している。しかし言葉のつながり具合が良くない。「しとど打つ」のは「冬の雨」であるはずなのに、「や」という切れ字で分断されてしまっている。常識で判断すれば分かるだろと言われればそうなのだが、このままでは加賀の甍が「しとど打つ」ことになってしまう。「を」という助詞は散文的になるので嫌われがちだが、この場合は「や」の代わりに「を」を置いたらどうだろう。「しとど打つ加賀の甍を冬の雨」。黒瓦をこれでもかと打ちたたく強時雨が彷彿とする。 (水)

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