氏照の墓への道の初音かな     田中 白山

氏照の墓への道の初音かな     田中 白山

『この一句』

 日経俳句会の創設者村田英尾先生の眠る八王子霊園に、毎年桜の季節に句会有志が声掛け合ってお参りに出かけている。香華を手向けた後は近くの桜保存林や古城址を吟行する。今年も四月八日に八王子城址を散策した。掲句はその吟行句会の最高点句である。
 八王子城は後北条氏第四代北条氏政の弟氏照が精魂込めて築いた難攻不落の山城。しかし時代の趨勢如何とも為し難く、天下統一を目指す豊臣秀吉軍の猛攻によりあえなく潰え去った。中腹の林の中に氏照と家臣たちの墓がある。そこに至る道は厳しい登りだが、尾根筋は清々しい風が吹き、鶯の声が響く別天地の雰囲気であった。
 「黙々と階段を上がっている中でしきりに初音を聞きました。これをすかさず詠んだのはさすが」(冷峰)、「初音に励まされるように、あえぎつつ氏照の墓に詣でました」(二堂)というように、いかにも吟行句らしい雰囲気の句である。「氏照」という固有名詞があまり一般的ではないが、なんとなく由緒を感じさせ、歴史ロマンをかき立てられる。(水)

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