片方の手袋ばかり二年越し    杉山 智宥

片方の手袋ばかり二年越し    杉山 智宥

『この一句』

 手袋の片方はなぜ、あれほど簡単にどこかへ行ってしまうのか。幼い頃、毛糸編みの手袋を紐で結び、首に掛けていたが、それでも紐が切れて、一方が無くなっていく。大人になっても変わることがない。私の場合、片方を外してバッグに入れたつもりが、家に帰ると見当たらない、という具合である。
 残った片方はどうするのか。いつかもう一方が出てくることを期待して、タンスの引き出しなどにしまっておくのだが、夏になれば手袋を思い出すことはない。次の冬になり「そうだ、もしかしたら」と引き出しを開けてみても、当然ながら片方のまま。そしていつの間にか手袋のことは忘れてしまう。
 作者は片方だけで二年間を過ごしたらしい。新しいのを買うのが面倒なのか、あるいは残った片方に義理立てして買わないのかも知れない。やがて一方が出てこないまま年が過ぎ、不思議なことに残りの一つも、いつの間にか見えなくなっているはずだ。手袋は相方探しの旅に出たのである。(恂)

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