天道虫息吹きかけて飛ばしけり     星川 佳子

天道虫息吹きかけて飛ばしけり     星川 佳子

『季のことば』

 果樹や野菜を丹精込めて作っている者にとって一番憎らしいのがアブラムシとカイガラムシである。どちらも非常に小さくて、いつ湧き出したのか分からない。いつの間にか葉や枝にびっしり取り付いて、樹液を吸い、煤病菌をはびこらせ枝葉を黒くして弱らせてしまう。木の実には黒い斑点を付けてしまう。
 この憎らしき害虫を食べてくれるのが天道虫だ。直径1センチ足らずの半球形で、真っ赤な身体に黒い星を浮かべている。時には黒地に赤い星のもおり、黄色地に黒星もある。とにかく可愛らしい姿で子どもにも人気がある。アブラムシが出現する四月頃から秋一杯、盛んに庭や菜園を飛び回る。
 しかし天道虫は一所に留まってそこの害虫を取り尽くしてくれるわけではない。腹が一杯になればどこかへ飛んでいってしまう。そこで遠くへ飛んで行かないように、羽根があまり伸びない天道虫を作り出そうと実験を重ねる研究所も生まれたという。この句の天道虫は逆で、とても人なつっこい。腕に留まって離れようとしない。「お前さん、いい加減に飛んで行きなさい」ふーっと息を吹きかけたら、思い出したように青空に飛び立った。(水)

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