虫の音や酸味効きたる向付     金田 青水

虫の音や酸味効きたる向付     金田 青水

『この一句』

 「向付(むこうづけ)」は辞書によれば、会席料理などの品目の一つ。一尺二寸四方の会席膳の中央より向う側に配する料理で、刺身や酢の物などがそれに当るという。句の場所は料亭と考えられよう。「酸味効きたる」とあるから、この料理は酢の物である。そして虫の音が聞こえてくるというのだ。
 これは「取合せ」の句である。向付の酢の物を口にしたら酸味が効いていた、という感覚と虫の音を取合せた句、ということだ。選ぶ側の神経をぴりりと刺激するものがある。気になる句ではあるが、いい句かどうかは分からない。作者に「この句、分かりますか」と問われているような気にもなる。
 かつて「二物衝撃」という、常識的でない「二物」の取合せによって新しい俳句を作ろうとする流れがあった。最近、その類の句とあまり出会わなくなったが、これは残党なのだろうか。虫の音と酢の物、虫の音と酢の物・・・と頭の中で繰り返しているうちに、何となく分かってくるような句である。(恂)

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