夜なべしてジャムを煮ている月夜かな    池村実千代

夜なべしてジャムを煮ている月夜かな    池村実千代

『この一句』

 九月の句会の1点句であった。点が少なかったのは「夜なべ」が季語(秋)で、「月夜」との季重なりになっていたからではないだろうか。季重なりはよくないとされ、季語が二つある句は初めから選ばない、と決めている人もいる。作句上、止むを得ぬ場合もあるが、この場合はどうなのだろう。
 「月」が句会の兼題だった。「夜なべ」は秋だけのものではないから、季語とは気づきにくい。うっかり使ってしまったのではないだろうか。「夜更けまで」「子ら寝(いね)て」など、言い換えるのはさほど難しくないと思う。一度、季重なりを指摘されると、次から気を付けるようになるものだ。
 それはそれとして、いい雰囲気の句である。「ジャムを煮る」というのは、主婦の仕事としてちょっと格好がいい。夫はもう寝てしまったのかも知れない。台所の窓が何となくいつもより明るい。そうだ、今夜は仲秋の名月だ、と気づく。窓を少し開けて空を眺めてみた、というような状況を思い描いた。(恂)

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