糠漬けの鉈豆反りを失はず   谷川 水馬

糠漬けの鉈豆反りを失はず   谷川 水馬

『季のことば』

 鉈豆(ナタマメ)は初秋の季語。熱帯アジア原産で、夏に勢いよくツルを伸ばし、七月から九月にかけて白かピンクの可憐な花を次々に咲かせ、その後に平たい山刀か鉈のような形の巨大なサヤ豆が出来る。
 天明の俳人太祇に「刀豆やのたりと下がる花まじり」という句があるように、江戸時代から日本人に親しまれ、若いサヤを炒めたり煮物にしたり、漬物の材料にした。しかし、柔らかく口当たりのいいサヤエンドウやサヤインゲンに追われ、福神漬の中に辛うじて見つかる程度の野菜になってしまった。ところが最近ナタマメが腎臓病、歯周病、痔、蓄膿症、吹き出物、アトピー、花粉症に効くと、まるで万能薬のように言われ始め、人気急上昇だという。
 この句は家庭菜園のナタマメか、本場の薩摩鉈豆を手に入れたのか。この豆は今どきの家庭の糠味噌容器には入り切らない図体だから、漬かったものをもらったのかも知れない。しっかりした鉈豆は鼈甲色に漬かっても、元のしゃんとした姿を失わず、ぴんと反っている。立派なもんだなあとしきりに感心している作者が浮かんで来る。写生の中に心情が込められている。(水)

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