陽の当る枯野に萌ゆる生命かな   前島 厳水

陽の当る枯野に萌ゆる生命かな   前島 厳水

『この一句』

 枯野は淋しい感じがするものの、とても明るい印象がある。ことに小春日の昼下がりなど、ぽかぽかとした陽光を受けて黄金色に輝く枯野は真底明るく、まばゆい。しかし、初夏の鮮やかな緑の野原と違って、躍動する感じは無く、ひっそりと静まりかえっている。
 そのひっそりとした枯野の、枯れ草に覆われた地面を注視すれば、そこには緑色の小さな芽生えがいっぱいあることが判る。深い雪に埋まる北日本では無理かも知れないが、関東地方以南では野原が枯れ色に覆われる十二月には、早くもハコベ、ナズナ、セリ、ハハコグサなどが、来るべき春に備えての芽吹きを始めている。
 この句は「枯野に萌ゆる生命」と言ったところが教科書的で少々理屈っぽく受け取られてしまうかも知れない。しかし、そうした事実をきめ細かく観察し写生して、陽の恵み、自然界の輪廻転生に思いを致したところが共感を呼ぶ。(水)

"陽の当る枯野に萌ゆる生命かな   前島 厳水" へのコメントを書く

お名前:
メールアドレス:
ホームページアドレス:
コメント: