秋冷や何やら嬉しトレーナー     谷川 水馬

秋冷や何やら嬉しトレーナー     谷川 水馬

『季のことば』

 俳句で「更衣・衣更え」(ころもがえ)と言えば、春着から夏着へ着替えることである。日本人の初夏の季節感を表す重要な季語一つと言えるだろう。ただし一般的には季節に相応しい着替えを意味しており、厚手のシャツを着たり、重ね着したりするのは、冬への衣替えと言って差し支えない。
 この句の主人公はふと寒さを感じて、木綿地、厚手のトレーナーを着てみたのだろう。「トレーナー」は和製英語で、本当は「スウェットシャツ」と言うらしいが、ともかくあのふわふわ感はそぞろ寒の時期に捨て難い。「何やら嬉し」という表現を見て、本当にそうだなぁ、と思わざるを得なかった。
 「裸虫(はだかむし)」という言葉がある。毛や羽などのない虫の総称だが、辞書類によれば「人間の異称」でもある。この時期、トレーナーを着た時などに、何とも言い難い嬉しさを感じることがあるはずだ。進化の過程で裸虫となった人間が、寒気の到来を前にして体毛を得た気分、と言えばいいのだろうか。(恂)

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