ゆらゆらと大暑の道の勤め人   高橋ヲブラダ

ゆらゆらと大暑の道の勤め人   高橋ヲブラダ

『この一句』

 大都会のオフイス街の歩行者は、コンクリートと金属とガラスで出来た巨大な箱の底部を這いずり回っている虫である。さなきだに暑い真夏日に、取り囲むビルのガラスや舗装路の熱で空気は否が応でも蒸され、熱風となって街路を吹き抜け、時には澱む。
 そういう所を歩くのはよほどの暇人か、どうしてもそこを歩かなければならない「勤め人」である。皇居東御苑で吟行があるからと、東京駅から炎暑の丸の内・大手町を突っ切る暇な老人が、万一熱中症にかかろうとそれは以て瞑すべし。しかし、仕事で歩き回らねばならぬのは気の毒である。勤め人でも「長」がつくようなのは車で行ける。アスファルトジャングルを夢遊病者のようにゆらゆらと行くのは、言うまでもなく哀しき平サラリーマン。
 この「ゆらゆらと」が効いている。こうした擬音語・擬態語は句を浮ついた感じにしてしまうとして忌み嫌う向きもある。しかし、この句のように大暑の街の情景をうたうのに用いると、非常な効果を発揮する。人もゆらゆら、街もゆらゆら、やがては世の中全体がゆらゆら? (水)

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