投網うつ夜明けの海や鰯雲           金田 青水

投網うつ夜明けの海や鰯雲           金田 青水

『この一句』

 浮世絵にありそうな江戸時代の風景を思った。しかし作者の住まいや日々の散歩の状況からして、実景に違いない。自分の頭の中では生まれそうもない図柄だっただけに、初めはしっくりこない感じもあった。やがて投網、夜明けの海、鰯雲の組み合わせに心を惹かれるようになっていく。
 投網を打つ人は浅場にいるのか、小船の上に立っているのだろうか。東京湾近辺での釣りの経験からすれば、スズキの幼魚のセイゴやフッコ、アジ、サッパあたりが獲物か。ワタリガニも暗い時はふわふわ浮いてくるから獲れそうである。ハゼやアナゴなど砂地に潜んでいる魚はだめかも知れない。
 考えが投網と魚ばかりに行ってしまったが、この句で最も重要なのは、もちろん夜明けの鰯雲である。東の方が明るくなり、上空の雲はうっすらと紅を帯びてきているのだろう。当欄ではすでに夜の鰯雲の句が紹介されているが、この句の場合は夜明けの鰯雲が空を覆っている。そこに投網がぱっと開くのだ。(恂)

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