朝霧の底をカヌーの漕ぎ出せり     徳永 木葉

朝霧の底をカヌーの漕ぎ出せり     徳永 木葉

『この一句』

 句を見て「朝霧の底」に人の影のうごめく風景が浮かんできた。海か湖か、川辺もあり得るのだが、ともかくカヌーの置き場か係留地である。時間は午前六時か七時頃。濃い朝霧が立ち込めている。岸辺にカヌー仲間が集まっている。車が一台、また一台とやって来て人が増えていく。ツアーの出発予定時刻に近いらしい。
 リーダー格の男が何人かを呼びよせ、腕を組んで話し合っている。「霧が晴れてくるまで、もう少し待とう」で一致した。立ち込めていた濃い霧が動き出したようだ。気づけば見通しは少しずつよくなっていく。上を見上げても青空は見えて来ないが、ツアーのリーダーは「よし、出発準備だ」とメンバーに伝えた。
 この時、句の作者は朝霧の中で待機するカヌーや人々を、やや遠くから眺めていた、と私(筆者)は想像する。旅の一日、早朝に目覚め、ホテルから散歩に出て・・・。ツアーに出るカヌーチームを見つけ、少し離れた場所からずっと見守っていたのだ。カヌーはやがて列をなし、霧の底を漕ぎ出して行ったのである。(恂)

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