面擦れに秋風沁みる朝稽古      中澤 豆乳

面擦れに秋風沁みる朝稽古      中澤 豆乳

『季のことば』

 学生時代の夏休みが終った後のこと。久しぶりに学校の道場に顔を出し、柔道部のライバルと稽古を行うと、相手の握る私の柔道着の襟と、首のあたりとが摩擦を起こして皮膚がむけ、真っ赤になってしまうのだ。句の面擦れは剣道の稽古によるものである。痛いだろうなぁ、と同情する。
 しかし人間の皮膚はなんと強いものか。痛いのも、擦れるのも構わず、練習を続けているうちに、一週間もたてばすっかり治ってしまう。そうなると、いかに強くこすれても、傷が付いたり、皮膚から出血したりするようなことにはならない。ところがまた、次の長期の休み明けになると・・・。
 この句を拝見し、そうだったなぁ、と懐かしく思い出したのは「秋風沁みる」である。夏休みが終わって九月。意気揚々と学校に出て稽古に臨むと、とたんに皮膚に擦り傷を負い、痛い思いをすることになる。アッ、またやってしまったか! 作者にとって、はるか昔の季節感なのである。(恂)

この記事へのコメント