朝顔を褒めて一礼配達員      中嶋 阿猿

朝顔を褒めて一礼配達員      中嶋 阿猿

『この一句』

 この句は日経俳句会の八月例会で、参加者の約半数が選ぶという爆発的人気を得た。「光景がはっきり、くっきり」(青水)、「玄関先での束の間のやりとりが爽やかに伝わる」(操)、「爽やかで礼儀正しい宅配便のお兄ちゃん」(豆乳)などなど、一様に句の臨場感を讃えた。「朝顔」の兼題で、花は小道具にして主役は好感が持てる配達員という造りの掲句は、確かに異彩を放ち、目立った。
 てっきり作者近辺での出来事を詠んだのかと思ったが、本人の解説によると、インターネットで見つけたブログか何かのエピソードからヒントを得たという。曰く、配達先の玄関脇の鉢植えを誤って割ってしまった配達員が弁償させてほしいと住人に申し出た。住人は、そもそも通路に鉢を置いたこちらが悪いからと弁償を断った、というようなほのぼの話だそうだ。
 「読者に共感してもらえる句は、事実を語ったからではなく、事実のように感じられたから」と俳句にフィクションがあって良しとする人もいる。掲句も伝聞を元に作ったようだが、リアリティ溢れる作品として共感を呼び、筆者を含め大勢の人が拍手を送った。(双)

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