億劫が先立つ齢百日紅     久保田 操

億劫が先立つ齢百日紅     久保田 操

『季のことば』

 百日紅は晩夏の季語、つまり七月のものとされているが、六月末頃から九月までずっと咲いている。だからこそ「百日紅」という名前が付けられたのだろう。しかし、百日紅と書いて「さるすべり」と読ませるのは全くおかしい。インド原産のこの樹木が中国経由でわが国に伝えられた時、百日も赤く咲き続けるということで「百日紅」とされたのだが、木肌がつるつるして猿も滑っちゃいそうだと、「さるすべり」とも呼ばれ、いつの間にかこの別名の方が通りがよくなって、本名の百日紅の字はそのままに、そう読むことになってしまったらしい。
 百日紅が真っ青な夏空をバックに咲いているところはとても美しいが、喘ぎつつ上る坂道などで見るとうんざりすることがある。むんむんぎらぎらの舗道に濃いピンクの花が散らばったところなど、どうしようもない暑苦しさを感じる。節くれ立ち、曲がった木の先の方に緑の葉をつけ、その先に毒々しいほどの桃紅色の花びらが固まっている。一見枯木みたいなのに、実に強い。ついつい「私しゃそんなに頑張れないよ」と愚痴が出てしまう。この句はそんな感じを如実に詠んでくれた。(水)

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