ホームから磯波眺む夏の果て     塩田 命水

ホームから磯波眺む夏の果て  塩田 命水

『この一句』

 ホームから海が見える駅は全国に点在する。関東近縁だと小田原の根府川駅や江ノ電の鎌倉高校前などが浮かぶ。ただ、どちらも「磯波」の雰囲気はない。どこだろう、と作者に聞けば青森のJR五能線千畳敷駅だという。ネットで写真を見ると、確かにごつごつとした岩肌むき出しの海岸がホームの目の前に展開していた。季語のはたらきもあって、なんとなく感傷旅行をイメージさせる素敵な句だ。
 句会では「ホーム」が話題になった。かつてはホームといえば駅のホームに決まっていたが、今は老人ホームが話題になることが多い。例えば、週刊誌。若い人は見向きもしない媒体で、読者は年配者ばかりなのか、特集記事は「相続」「終活」「病院」「薬」などなど。昨今は「老人ホームの選び方」が目立つ。
 仮に「秋風やホームの母のほつれ髪」と詠んだとして、駅か施設か判然としない。掲句も海の見える老人ホームか駅か、読者は少し迷う。「駅ホーム」とするのも冴えないし、こういう場合は「五能線千畳敷駅にて」などの前書きが有効かもしれない。(双)

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