関ヶ原読経流るる夏野かな     吉田 正義

関ヶ原読経流るる夏野かな     吉田 正義

『この一句』

 天下分け目の関ヶ原。この辺りは本州の勢力を東西に分ける地域だけに、歴史的な決戦が繰り広げられてきた。有名な「関ヶ原の戦い」だけでなく、「壬申の乱」や「青野ヶ原の合戦」もあった。故郷がこの地の近くにある作者は、特に夏草の時期になると「兵(つわもの)共がゆめの跡」に思い巡らせるという。
 「関ヶ原の戦い」の際は東西両軍が夏の間に集結して対峙し、秋口になって戦の先端が開かれたようだ。歴史書や絵巻物などを見れば、合戦の時期についてさまざまな状況が思い浮かぶが、作者がいつも心に描くのが夏野、と語っている。馴染の深いこの時期の関ヶ原に立つと、鎮魂の思い自然に湧いて来るという。
 関ヶ原に近い岐阜市や大垣市の辺りは寺が多く、信仰の厚い地域とされている。大きな戦いで数多の命が失われた地だからだろう。作者が夏休みなどに帰郷すると、近隣の寺院から読経が流れてきて、昔の戦に思いを馳せてしまう。「この句には、夏野に散った兵たちの鎮魂の思いも・・・」と作者は語っていた。(恂)

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