子をあやすゆらゆらゆらり蝌蚪の紐     田村 豊生

子をあやすゆらゆらゆらり蝌蚪の紐     田村 豊生

『おかめはちもく』

 「蝌蚪(かと)」とは何か。一般の人にこう訊ねて、何割の人が「おたまじゃくし」と答えられるだろうか。虚子が使い出して広まったとされ、山本健吉は「(その)大勢は如何とも抗し難い」と嘆いている(日本大歳時記)。とは言え、たったの二音とは有難い。俳句語として使って行こう、ということになる。
 そしてもう一つ「蝌蚪の紐」。紐状のおたまじゃくしの卵を見たことのない人はこれも「?」となるだろう。しかしこれらを使って俳句を作ると、新たな知識を増やすことになる。そんな効用を述べて句会の兼題としたら、続々と「蝌蚪」の句が登場した。「便利だからねぇ」という言葉があちこちから聞こえていた。
 そして掲句、「ゆらゆらゆらり」が好評だった。私も同感だが、「子をあやす」は、どうかな、と首を傾げた。波が蝌蚪になる前の卵をあやしているという、擬人法がやや気にかかる。句を選んだ一人が「ハンモックのようだ」と感想述べていた。その案を頂き、「蝌蚪の紐ゆらゆらゆらりハンモック」としてみたい。(恂)

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