春光に笑み浮かび出て摩崖仏     河村 有弘

春光に笑み浮かび出て摩崖仏     河村 有弘

『合評会から』(三四郎句会)

賢一 春になった、という感じですね。想像力を掻き立てられました。
久敬 「摩崖仏」という言葉を初めて知った。摩崖仏、ああそういう仏像なんだ、と思った。興味深い風景ですね。
諭 スケールの大きさを感じます。仏像が笑みを浮かべている。春が来たという感じで、ユーモアも感じる。
照芳 春光という光線で笑みが浮かぶのかな。そんな物理的な疑問もあるが・・・。
有弘(作者) 粗削りの仏像に光が当たって、微笑が浮き出てくるという感じです
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 摩崖仏と言えばまず国宝の臼杵の石仏群だが、この句を見て奈良県宇陀市、室生寺に近い大野寺の石仏を思い浮かべた。高さ十四叩1陀川とその両側の河原を挟んで、かなり遠い所にあるのに、「大きいなぁ」と嘆声を挙げたほどの存在感があった。あの石仏に春の陽が当たれば、笑みが浮かんで来そうである。
 念のため宇陀の摩崖仏をネットで調べてみたのだが、どの写真も顔がはっきり写っていない。なぜだろうか。思い出せば、私が見た時は燦燦と陽が輝いていた。あの時、摩崖仏様は笑っておられたのだろう。(恂)

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