噺家の羽織すべらし春の色     田中 白山

噺家の羽織すべらし春の色     田中 白山

『合評会から』(番町喜楽会)

百子 噺家がよくやる仕草ですね。作者は春になって寄席にでも行ったのでしょうか。楽しい感じ、明るい感じがよく出ています。
春陽子 まくらをしゃべりながら羽織を脱ぐ光景ですね。「春の色」は何の色だろう。鶯だろうか、浅葱だろうか、などと想像して読みました。
迷哲 面白い句だが、「春の色」は羽織の色なのか、それとも着物の色なのか、どちらかよく分からないなと思いました。
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 これはたぶん羽織の裏の色だろう。近ごろの若手は色盲かと疑われるような、派手々々しい色の着物や羽織で高座に上がるのが居るが、芸も良く落ち着いた噺家は羽織裏に凝った色合いの裏地を見せてくれる。この句、やはり「春の色」と言い止めたところがいい。桜色かも知れない。
 さりげなく羽織をすべらす一瞬をうまく詠んだものだなあと思う。その時、ちらりと桜色の裏地が見えた。「師匠、やるねえ」。(水)

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