若者を追越し歩く息白し 和泉田 守
『季のことば』
外気温が冷たいと吐く息は白く見える。真冬なら当たり前のことなのだが、当たり前のことを捉えて、その季節をまざまざと感得させるのが俳句である。冬の季語「息白し」、「白息(しらいき)」と詠むこともある。
「近ごろの若い者は・・」とは、いつの時代でも老人特有のセリフであり、これを言うことが即ち年老いた証拠である。ということは重々わきまえているのだが、どうにもこうにも近ごろの若者の軟弱ぶりには業を煮やす。何しろ動作が鈍い。混雑する駅構内の通路などでものったりのったり歩いている。スマホをいじくりながら歩いていると自然に歩みが遅くなるが、それが身についてしまったのか、素手で歩いている時も遅い。時にはずり落ちそうにしたズボンの男の子と、パンティが見えるほどたくし上げたスカートの女の子が手を繋ぎ、肩を組み、階段の踊り場でいちゃついていたりする。
まあこういう弱い人種を育ててしまったのも我々大人の責任なのだが、それにしてもなあと思う。そして、急がずとも良いものを、息せき切ってのろまを追い越し、ぜいぜい白い息を吐いている。(水)
この記事へのコメント