福詣はりきって押す井戸ポンプ 星川 水兎
『この一句』
池上七福神吟行での一句。この辺一帯の住宅街にはあちこちにまだ現役の井戸ポンプがある。植木に水をやったり、夏場は家の周りや道路に撒水するのに利用しているようだ。吟行に参加した人たち誰もが懐かしがって、この作者など把手を握って上げたり下げたり子供に還ったようだった。そんなこともあって、吟行句会には同じ素材を詠んだ句がいくつか並んだ。その中でこの句は「『はりきって』が福詣にもかかっているようで、勢いがある」(綾子)といった評を得て人気を呼んだ。
「福詣」という季語に、「井戸ポンプを押す」というのはちょっとかけ離れた取り合わせと取る人がいるかも知れない。あるいは考えた挙げ句、社寺の御手洗(みたらし、手水所)あたりの井戸だと思った人もいるかも知れない。
実際は吟行途中に見つけた手押し井戸ポンプをぎこぎこ動かして喜んだ情景なのだが、この一句だけをすっと差し出されるといろいろ考えてしまう。吟行は書斎に居てはとても詠めない句がふっと出て来て面白い。(水)
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