また元の二人に戻り七日粥 嵐田 双歩
『季のことば』
松の内はあれやこれやあり、来客もそれなりにあって賑やかに過ごしたが、七草粥の今日はまた老夫婦二人だけのひっそり閑とした住まいに戻ったなあという感懐。
この句は何と言っても「七日粥」が利いている。静かで慎ましい年寄り二人の朝餉の雰囲気、それも健康と長寿を祈りつつ啜る七草粥で締めたのがいい。寒の朝の空気も伝わって来る。おそらく大して喋ることもないのだろう。別に喧嘩しているわけではないのだが、若い頃のように喋りちらすようなことがすっかり無くなっているのだ。あれこれ言わなくてもお互いの考えていることは大概分かる。
きのうの本欄に掲げた、子や孫が揃って賑やかな元日風景を詠んだ句の続編のような感じである。これからまた一年静かな暮らしが続くのだが、お互い何とか健康で行きたいなあと言わず語らずで伝え合っている。ダンナが黙って茶碗を差し出す、カミさんは七分目によそったのを差し出す。お代わりの塩梅もすっかり心得ているのだ。(水)
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