クルーズやロングドレスで霧笛聞き     池村実千代

クルーズやロングドレスで霧笛聞き     池村実千代

『おかめはちもく』

 クルーズは日本人にとって今なお異次元の別世界であるはずだ。特に客船の上に「豪華」が冠されていたら、文字通り夢の時間を過ごせるに違いない。船長主催のダンスパーティとかナイトクラブといった場に、ロングドレスの作者がいる。そんな非日常の場で突然、胸の奥に響くような霧笛が鳴る。
 俳句に詠まれた情景として非常に珍しく、少なくとも私はこのような句に出会ったことがない。選句表の中に掲句を見つけて「オッ」と目を見張ったのだが、黙読を何度か繰り返すうちに、どこかしっくりしないものを感じた。「ロングドレスで」の“で”と「霧笛聞き」の“聞き”が気になるのだ。
 直そうにも「クルーズ」「ロングドレス」「霧笛」は外せない。残りは僅か四音ばかり。字余りも破調もOKと条件を緩め、次のように作ってみた。『クルーズの霧笛ロングドレスの私』。俳句の懐の広さを考えると、このような二行詩風も許されるはずだ。代案が出てくるかな・・・、とも思っている。(恂)

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