小鳥来る沼に朝日の満ち満ちて 廣田 可升
『季のことば』
「小鳥来る」という季語は、「渡り鳥」の言い換え季語。10月半ばを過ぎると大陸から日本海を越えて続々やって来る。鶴をはじめ雁、鴨、白鳥などの大きく目立つ渡り鳥は「鶴来る」「雁渡る」「鴨渡る」というように、それぞれの名前を冠した独立の季語に立てられている。これに対して、鶫(つぐみ)、常鶲(じょうびたき)、連雀(れんじゃく)など小さな渡り鳥はひとまとめにして「小鳥来る」という季語になっている。さらに、一年中日本に棲んでいるのだが、夏場は山地に居て秋深まると平地に降りて来る百舌鳥(もず)、椋鳥(むくどり)、鵯(ひよどり)などの漂鳥も「小鳥来る」に加えられている。
この「小鳥来る」を10月句会の兼題として出したら、「難しい」という声があちこちから上がった。「渡り鳥なんて見たことがない」と言うのである。確かにそうだ。昭和40年代までは東京近辺にも渡り鳥が大挙してやって来たが、近ごろはよほど注意していないと渡り鳥のやって来る様は見えない。
この句は郊外の早朝散歩か。沼のほとりに見慣れない小鳥が来ているのに気が付いた。とても感じの良い清新の気が漲っている句だ。(水)
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