雨上り蛙居坐るドアの前 宇野木敦子
『おかめはちもく』
この句は七月の句会に出され、「蛙?」と訝った人もいた。俳句における「蛙」の季は春で、赤蛙や殿様蛙などを意味し、夏の句会では季節外れとなる。一方、句の蛙はドアの前に居座る、という様子から、蟇蛙(ひきがえる)のようだ。夏の蛙ならば、青蛙、雨蛙、そして最も存在感のあるのが蟇蛙(蟇=ひき)である。
ドアを半ば開いて蛙を見つめ、どうしようか、と迷う作者。なかなか面白い場面だが、勝手に蟇蛙と決めるわけにもいかない。とりあえずメールで作者に問い合わせたところ、こんな返信が届いた。――この蛙は我が家の主で、二十造らいです。 のっそりと出てきます――。間違いなく蟇である。
メールはさらに続く。――可愛い顔はしていません。焦げ茶です。大人しいのですが、出掛けようとした時、ドアの前に座っていたので、さて、と考えてしまいました。少し小さいのも いるので、子供か奥さんか、ですね。大きな蛙は少し太り気味です――。添削は一字を取り替えるだけで済んだ。(恂)
添削例 「雨上り蟇の居坐るドアの前」
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