店先に一坪ほどの青葉闇     久保田 操

店先に一坪ほどの青葉闇     久保田 操

『季のことば』

 青葉が茂り、日の光が遮られて昼なお暗くひんやりとした樹林の下を言う。「木下闇(このしたやみ)」と言って奈良平安時代から詠まれ続けて来た古い季のことばで、俳諧時代になると「こしたやみ」と縮めて詠まれるようになり、さらに「下闇(したやみ)」という短縮形も生まれた。「青葉闇」はその言い換え季語である。似たような季語で、明治の末か大正時代に生まれた「緑蔭(りょくいん)」というのがあるが、これは樹木がもう少しまばらで、木漏れ日が射し込んで来るような情景。木下闇・青葉闇と比べると明るい印象を受ける。
 この句の青葉闇はなんとまあ「一坪ほど」だという。老舗の料理屋か蕎麦屋か、店の玄関に到る石畳の左右には、石灯籠なども配置された小庭があるのだろう。それを「店先に一坪ほどの青葉闇」と大げさに詠んだところがとても面白い。
 ほどよく撒かれた打ち水も心地良く、これから頂く御料理もさぞやと、楽しみがふくらむ。たらふく食べて、ほどよく飲んで、すっかりいい気持になったが、おかげで懐もだいぶ涼しくなった。(水)

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