雷電の墓に詣でり雲の峰     徳永 木葉

雷電の墓に詣でり雲の峰     徳永 木葉

『季のことば』

 「雷電は史上最強の大関、本当に季語に合っている」(反平)、「偉大な雷電に雄大な雲の峰が繋がっている。さらさらと詠んで凄く上手い句」(涸魚)。これらの評の通り、無造作に詠んでいながら、これほど雲の峰を感じさせる句も珍しいと感服した。確か雷電為右衛門は信州の産だと思っていたら、上田市在住のてる夫さんが句会に居て「上田市の隣の東御市に生家があり、国道沿いには道の駅「雷電の里」があって史料展示しています」と教示してくれた。
 また、雷電は妻八重の郷里千葉県の臼井で相撲興行を何度も開催している。草深い村で再三興行したのは、愛妻家だった証しでもあろう。八重の実家の傍に家を構え、そこで没したとも言われている。佐倉市の浄行寺には雷電と八重、幼くして死んだ娘の墓があり、見に行ったことがある(浄行寺は廃寺で現在は近くの妙覚寺が管理)。この句の作者は佐倉在住。もしかしたらこちらのお墓を詠んだのかも知れない。
 まあそれはどちらでも良かろう。江戸の本場所で254勝10敗、勝率96.2%という圧倒的な成績。まさに盛夏の空に立ち上がり、下界を睥睨する入道雲である。猛暑を吹き払ってくれるような気持良さも感じる句だ。(水)

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