夏の月蒙古放浪夢一夜     野田 冷峰

夏の月蒙古放浪夢一夜     野田 冷峰

『おかめはちもく』

 添削のコーナーと心得ていた当欄に意外な要望が到来した。冷峰氏から「私の2句を『おかめはちもく』の俎上に載せて頂けないか」という申し入れがあったのだ。二句は句会での得点は少なかったが、句会後の団欒の場で、会の主宰者から、ともに◎を頂戴したという。この評価の差は「なぜなのか」というのが作者の問いである。
 軽い気持ちで「いいですよ」と引き受けたが、改めて掲句を眺めて「古いねぇ」と思った。半世紀以上も前、バンカラ学生が歌っていた「蒙古放浪の歌」が自然に甦ってくる。「心猛くも鬼神(おにがみ)ならぬ・・・」。二二六事件、大陸浪人、満蒙開拓団--。私の頭の中にはマイナスイメージばかりが溢れ出てくるのだ。
 当時の日本政府の大陸進出はあらゆる面で認められない、と私は考えている。満蒙のことは悪夢として否定せざるを得ないのだ。もう一作、トマトを詠んだ句には破天荒なエネルギーが感じられ、好感を抱いたが、掲句は相性が悪いと言う他はない。現代的な「ゴビ砂漠放浪句」でも作って頂けないか、と思っている。(恂)

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