緑陰に廻り廻りてさざえ堂 塩田 命水
『おかめはちもく』
「さざえ堂」とは? 聞いたことはあったが、それ以上のことは知らなかった。さざえの尖った先を上に、“蓋の取れた”入口の方から、ぐるぐると上に登っていく形の御堂を想像した。その通りだったのだが、実は堂の実態を調べる暇も、句の点検の間もなく、慌てて「欠席選句」をした。
恥ずかしながら句会の日取りを勘違いしていた。会場からの幹事の電話に仰天しつつ、選句を伝えたのである。すでに5句に〇印をつけていて、その中に掲句も入っていた。翌日の新聞(日経)に、思わぬ記事を見つけた。何と「会津さざえ堂」が写真付きで大きく紹介されていたのだ。
その後に句を見直した。「緑陰に」の「に」がどうしても気に入らなかった。私が選んだだけの一点句に終わったのは、そのせいかも知れない。「緑陰を」なら無難だろう。上五の季語を「青葉影」「木下闇」「万緑を」などに変える手もあった。今でも「惜しかった」と思っている。(恂)
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