ブロンズの弓引く像や風五月 広上 正市
『この一句』
私事を申し上げる。句会の合評会が始まる前に、レコーダーを動かし、録音をしておくのだが、終わってから電池が切れに気付いた。本欄を書くのにあたって、ちょっと困ったな、という状態になった。掲句のブロンズ像のことは、欠席投句・選句のお二方のコメントを頂いてから、思い出したものである。
「この像があるのは国立西洋博物館の前庭でしたか」(綾子)「ブルーデルの弓を引くヘラクレス。簡潔に対象を描写していて・・・」(青水)。ブロンズ像への私の記憶は曖昧で「有名な彫像のはずだ。美術の本で見たことがあったかな」くらいに考えていて、像の具体的な姿を思い画くことが出来なかった。
二つのコメントによってようやく、左足を岩に掛け、上空に向かって弓を引き絞る男の像がはっきりと浮かび上がってきた。「五月の風が吹き渡る」「下五(風五月)で決める手腕に脱帽」という言葉もあり、それによって句への評価も定まった。この小文は、お二人の選句力に助けられている。(恂)
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