新緑へカード一枚風まかせ     金田 青水

新緑へカード一枚風まかせ     金田 青水

『季のことば』

 「若葉」「新樹」「新緑」という、初夏のみずみずしい緑をもてはやす三つの類縁季語がある。「若葉」は春に芽吹いた葉が黄緑からやや濃くなった頃合いで、実に新鮮な感じだ。芭蕉が唐招提寺の鑑真和上の像を拝んで詠んだ「若葉して御めの雫ぬぐはばや」という句にもうかがえるように、若葉には病や傷を癒す霊力があると信じられてきた。萎えたもの、傷んだものを甦らせるというのである。それを木全体にまとったのが「新樹」で、まさに精気溌剌。さらに「新緑」となれば、緑の野山すべて一望といった気分である。さらにさらに、そこを吹き渡ってくる風が素晴らしい。「薫風」である。
 憂き世のしがらみから抜け出して、新緑の世界に飛び出したい、羽を伸ばしたいと誰しも思う。そんな思いがゴールデンウイークなどという連休を生み出した。この句の作者もその一人。リュックもカバンも持たず、身一つで目的地も定めずに行き当たりばったりの電車にでも乗ってしまったらしい。まとまったお金は持っていない。しかしままよ、カードがあるじゃないか。現代版瘋癲老人はいざとなっても路頭に迷うことはない。(水)

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